「夢と誇り」を抱いて働き続けるキャリアパスが描けるように

岡山大学病院は、専門職として自律した看護職員を育成することを目指してきた歴史があります。大学院あるいは認定看護師課程への進学やJICAへの参加にも支援を行ってきました。加えて、2009年度文部科学省「看護師の人材養成システムの確立」事業では、「夢と誇り」を抱いて職務に励み、生涯働き続けるキャリアパスが描けるよう、様々な角度から支援を行いながら、キャリアパス構築に向けて準備を行いました。

特に、「EBN志向で身体をみることができる」ジェネラリストナースの育成のために、フィジカルアセスメント岡大モデルや新人看護職員研修プログラムの開発に力を入れています。当院の伝統と新しい取り組みを統合し、岡山大学病院の目指す看護職員像をもとに、キャリアパスの再構築を行いました。

キャリアパス
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それぞれのキャリアパス

採用から3年間でフィジカルアセスメントやコミュニケーションなどの看護職員としての基盤となる教育を受け、その後、当院の特徴である小児やクリティカル領域への部署異動を経験しながら一人前の【ジェネラリスト】に成長します。さらに、いかなる領域や対象においても、卓越した看護を提供できる【卓越したジェネラリスト】を目指します。

また、【看護管理者】【看護教育者】【スペシャリスト】【臨床研究者】というキャリアパスが準備されており、これらを選択しキャリアを広げることが出来ます。キャリアに対する考え方は変化していくため、一旦選択したキャリアパスの変更も可能です。 そして、その活動の場は、病院内にとどまらず、地域社会や世界へも開かれていることが特徴です。

ジェネラリスト

ジェネラリスト

キャリアパスの図に示すように、1年目から3年目の看護職員には必須研修が準備されています。4年目からは自律した看護職を目指し、自分で研修を選択していきます。

また様々な領域で経験を積み、実践を通してジェネラリストとして成長します。ジェネラリストは、岡山大学病院の医療、看護(患者さん)を支える重要な人材です。

まずはジェネラリストとしての基本的な能力を身につけ、さらに幅広い知識・技術を深めながら、準備されたキャリアパスを自分自身で選択し、自信を持ってキャリアを開発していくことができます。

ジェネラリストとは
いかなる領域・対象においても、基本となる知識・技術を応用し、安心・安楽・安全な看護を提供できる者、リーダーの役割が取れる者。

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卓越したジェネラリスト

看護師 仙波 さなえ
看護師 仙波 さなえ

私は様々な部署を経験して現在に至ります。それぞれの場所で精一杯自分のできることを考え、先輩や後輩と切磋琢磨しながら看護を積み重ねることで、今の看護師としての自分があると思っています。
もっと成長しなくては、と思い悩んでいる時に「どうなったら満足する?」と上司に言われた言葉が強く心に残っています。自分を満足させるために学び続け、看護師としてはもちろん人としての経験も積み重ね、いつの日か卓越を超えた超越したジェネラリストになれる時を迎えられたらいいな、と思います。

現在のキャリアパスを目指した理由

他大学病院で勤務していた際、上司からの勧めがあり、人事交流という形で岡山大学病院と出会いました。ワークライフバランスを大切にし、様々な年代の看護師がお互いを尊重し合いながら働いている姿が魅力的で、岡山大学病院での就職を希望した経緯があります。岡山大学病院は、自由なようで、一人一人に視線を向けてくださっている組織であると思っています。私は毎年自分に目標を課し、様々なことにチャレンジしています。当院で働いているからこそ、後押ししてくださる上司がいて、周囲のスタッフの理解もあり、目標を達成することができているのだと思います。

現在の役割について

患者さんに、安心・安全で、最善な医療を受けていただくことを一番大切に考えています。そのためにも、部署での教育は重要だと考えます。私は2020年にフィジカルアセスメントOJTナース研修を修了しました。そして今年度からは教育委員として、エルダーやプリセプター、PEPサポーターと協力し、どの年代の看護師へも教育支援ができるよう日々奮闘中です。
同僚の素晴らしい対応や考え方を目の当たりにすることも多く、その都度、承認やポジティブフィードバックをするよう心掛けています。看護はもちろんですが、気持ちよく働ける環境作りをしていくことも私の役割です。

卓越したジェネラリストとは
いかなる領域・対象においても、豊かな経験知と技術を巧みに駆使し、臨床現場の最前線で卓越した看護を追求する者。

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看護管理者

看護師長 物部 さおり
看護師長 物部 さおり

副看護師長6年、看護師長3年を前部署で経験しました。そこでは3交代から2交代(16時間夜勤導入)、その後12時間夜勤導入、PNSの看護提供体制を導入し、大きな病棟改革をしました。看護職員の働きやすさを求め、患者さんへ安心・安全・安楽な看護サービスの提供を目指すことができたと実感しました。その経験を軸に、現在の部署でも同じように実践しています。現状に満足せず、まだまだ「変革」を楽しみたいと思っています。

現在のキャリアパスを目指した理由

副看護師長を目指したきっかけは「ジレンマ」です。リーダーとして働く中で、新たなことにチャレンジしたくても、なかなか古い看護提供体制から抜けだせない、変えられないことにジレンマを感じ、役職を得て何かを変えていきたい、自分自身も力をつけていきたいと思うようになりました。そして副看護師長の経験を経て、新たに看護師長として歩むことは、大きな挑戦でしたが、前部署の看護師長との出会いも、私にとっての支えになりました。

現在の役割について

看護管理者として求められるマネジメント力とは、「ニーズを読む力」「分析を深く行う力」「実行する力」だと思います。現場を変えるのは現場でしかないと思っています。常に現場の問題を俯瞰し、成果の見える取り組みを行うことが求められています。先延ばしをせず、「今」と「未来」を見据えて、現場の声に耳を傾ける。そして看護職員への動機付けや承認を行い、常に看護の力が最大限に発揮できるよう心がけています。

看護管理者とは
質の高い看護サービスが提供できるよう、看護体制を創造する者。管轄単位の管理責任者として看護経営に責任を持ち、病院経営に参画する者。

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スペシャリスト

急性・重症患者看護専門看護師

宮岡 里衣 専門看護師
急性・重症患者看護専門看護師 宮岡 里衣

集中治療を必要とする患者さんは、急な発症や重篤な疾患により時には生命の危機状態にあります。私たち医療者には、患者さんがより早期にできるだけ合併症がなく回復に向かうための治療・ケアが求められます。また時には治療を尽くしても回復が難しく、最期を迎えなければならないこともあります。私は、患者さんにとって最善の治療ができるよう、医師や看護師をはじめ多職種の医療者と連携しながら実践しています。また患者さんの意思とそれを支えるご家族の思いを尊重し、その方らしい生き方を支援しています。

現在のキャリアパスを目指した理由

多くの職種の医療者が関わる集中治療の現場で働く中で、患者さんの回復を願う医療者たちが連携できれば、もっとよい医療・ケアができるのではないかと考えるようになりました。看護師は多職種の医療者が集まるチームの調整役と言われますが、具体的にどうすべきか、自分では見つけられず限界を感じました。各医療者の持つ力を、患者さんのよりよい医療やケアにつなげたいと思い、大学院へ進学し専門看護師の資格を取得しました。

現在の役割について

看護は、患者さんやご家族の抱えるさまざまな症状や思いに気づくことから始まります。その気づきが看護師の持つ知識や経験から、より患者さんの回復を促進し、思いに寄り添う看護へと発展できるよう一緒に考えていく支援をしています。また、患者さんに関わる医療者が作るチームが同じ方向で医療・ケアができるよう、多様な医療者の意見を活かしながら、場や人に応じたコミュニケーションを通じて調整をしています。
看護は、患者さんやご家族の「生きる」に向き合う経験の積み重ねだと思います。経験を看護の力にできるよう看護師のみなさんの学びを支援していきたいと思います。


認知症看護認定看護師

三牧 好子 認定看護師
認知症看護認定看護師 三牧 好子

認知症発症リスクの一つに加齢があります。超高齢社会である現在は必然的に認知症になる方が増えており、決して他人事ではない病気です。認知症看護認定看護師は、認知症の方が少しでも安心して自分らしい人生を過ごすことができるように支援し、ご家族の方が認知症の方をあたたかく支えることができるように支援します。認知症の方は状況を適切に判断したり、自分の思いをうまく伝えることが難しくなります。安心して療養できるように環境を調整し、認知症の方の意思表示をサポートし、認知症の行動心理症状やせん妄を予防・緩和できるように看護します。

現在のキャリアパスを目指した理由

高齢の入院患者さんが物忘れなどの症状に辛そうにしていたり、妄想にとらわれて困っている姿をみて、どうにか解決したいと思ったのが最初のきっかけでした。認知機能が低下していても、その人らしく笑顔で生活できるように支援したいと思い、認知症看護認定看護師を目指しました。

現在の役割について

精神科リエゾンチームの一員として、入院中の患者さんやそのご家族の精神的・心理的苦痛に対してアプローチをしています。看護師だからこそ気づけることをチームメンバーに伝えて話し合うように努めています。具体的には、せん妄予防・せん妄発症後の症状緩和、不眠の改善、精神症状のコントロールを行います。また認知症があっても身体的治療がスムーズに行えるように環境を調整し、患者さんの思いや症状を考慮した関わり方などを病棟スタッフと協働して実践しています。

スペシャリストとは
特定の専門領域や対象において卓越した実践能力を持ち、日本看護協会から認定看護師もしくは専門看護師の認定を受ける者。

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看護教育者

看護教育センター 藤原 幸恵
看護教育センター 藤原 幸恵

今まで多くの尊敬する先輩や上司、頼りになる後輩との出会いがありました。また、患者さんとの関わりも多く心に残っています。それらのすべてが現在の私に繋がっていて、出会いに感謝すると共に、看護師という仕事は大変だけどやっぱり楽しいと感じています。そして、仕事と家庭の両立に悩みながらも好きな仕事を続けていられるのは、組織としてWLBを支えて下さっているからだと強く思い、感謝しています。教育担当者として、多くの看護師が「看護は楽しい」と感じられるように支援することで、感謝の思いを還元していけたらと考えています。

現在のキャリアパスを目指した理由

病棟勤務時に臨床指導者をしていた際に、知識や技術を学ぶために看護協会の実習指導者講習会を受講したことが教育により向き合うようになったきっかけです。成人教育や効果的な指導方法等を学び、実習生や後輩看護師への関わり方も変わりました。 現在所属している看護教育センターは看護部全体の教育について考える部署です。教育に関する新たな知見を得ながら、より効果的な教育方法について検討・実践することで、自分自身のキャリアアップに繋がっています。

現在の役割について

看護師がやりがいを持って楽しく働く先に患者さんの笑顔があると思っています。そのためには、看護師として自信と誇りを持ち、自律的に学び続けることが必要で、その支援をすることが教育担当者としての役割だと考えます。年代や個性の違いにより、効果的な教育方法は変わってきます。知識や技術の習得を促すことはもちろん、看護師一人一人を尊重し承認することで、当院看護部のスローガンである「みんなで育とう、育てよう」を実践し、患者さんへ質の高い看護が提供される一助になりたいと思います。

看護教育者とは
臨床現場で学生や後輩の教育に関心を持ち、成人学習者に対する教育技法を用いて教育できる者。
岡山大学保健学研究科との人事交流により、基礎教育現場の教員を目指すことができる。また、再度臨床現場に戻る道もある。

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岡山大学病院

岡山大学病院 看護研究・教育センター

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