岡山大学病院看護部はPNSを採用しています 岡山大学病院看護部はPNSを採用しています

PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)とは、看護師2人がパートナーとなり、お互いに補完し、協力し合う事ができる新しい形の看護提供体制のことです。

PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)とは?

安心・安全な看護を効率的に提供できるシステムとして注目を集めている、福井大学医学部附属病院看護部発祥の新しい看護提供体制です。
2人の看護師がペアを組んで複数の患者を受け持ち、対等な立場でお互いの特性・能力を活かしながら補完・協力し合い、看護業務を行います。共に働く仲間を互いに尊重し、信頼し、慮ることで、より良い人間関係作りに繋がります。

岡山大学病院では2013年度からPNSの導入に取り組んでいます。


「自己完結型」の看護から「二人三脚型」へ

従来の看護は、看護師が1人で行う「自己完結型」でした。そのため看護師の経験によって患者の観察・状況判断などに差がありました。また体位変換をはじめ、1人では困難なケアをする際、応援を呼びに行くなど時間がかっていました。

PNSは、看護師2人が協働してケアを行う「二人三脚型」です。相手の技術や知識を実践的に学びながら、処置をよりスムーズに効率よく行うことができます。

従来の看護方式:1人で複数の患者を担当
従来の看護方式:1人で複数の患者を担当
PNS :2人一組で複数の患者を担当
PNS :二人一組で複数の患者を担当

PNSのメリット

PNSの導入により、看護師や患者さんにとってさまざまな環境改善が図れます。
そして各ペアの日々の業務を部署、病棟でも補完し、看護の質を維持・管理することができます。

看護師のメリット
看護師のメリット
  • お互いの技術や知識の補完ができる
  • 慣れない処置も2人で相談できる
  • 効率的に看護が行えるので、休憩が取れ超過勤務が減る
患者さんのメリット
患者さんのメリット
  • 担当が2人なので安心感がある
  • 点滴・薬・医師の指示などを2人で確認することで安全性が高まる
  • 応援が必要な処置がその場で行える
勤務環境の改善へ
  • 患者さんの情報を共有するため看護師間のコミュニケーションが活発になる
  • 点滴・薬・医師の指示などを2人で確認することで安全性が高まる
  • 育児や介護を行いながら働き続けられる環境が作りやすくなる

PNSの働き方 - 1日の仕事の流れ(長日勤)-

今回は入院棟西9階で働く看護師たちの1日をご紹介します。

8:00出勤・情報収集

出勤・情報収集
打刻してから電子カルテ閲覧開始情報収集はペアで分担

出勤打刻をしてから、ペアで分担して当日の担当患者の情報収集をします。

効率よくもれなく情報収集することがポイントとなります。

8:15朝の申し送り

朝の申し送り
夜間のトピックスと本日の予定の情報共有

8:15から全体の申し送りを行い、患者さんのトピックスや本日の予定を確認します。ICU迎え・手術搬入と手術迎え・化学療法・検査など、毎日盛りだくさんの業務を実施していますが、働くスタッフみんなで情報を共有することで、お互いの補完が可能となります。

また、リーダーは本日の業務の舵取り役です。全体の状況を把握し、スタッフからの情報を集めることで、時間内に業務を終了できるよう臨機応変に対応します。

*当病棟では、日勤は1人のリーダーと5ペア(長日勤-日勤の4ペアと日勤-日勤の1ペア)のメンバーで構成されています。また、手術件数の多い日は日勤フリー業務を担当するスタッフが1名います。

8:50ペアでミーティング

ペアでミーティング
担当患者さんの情報やスケジュールを確認してラウンドの準備

それぞれが収集した情報を確認し合い、本日のスケジュール(検査やケアなど)を大まかに組み立てます。ラウンドに行く前に、重症な患者さんの観察のポイントや病態の確認をしたり、経験したことのない検査や処置などがあれば先輩に伝えて調整したり、ペアでの重要なコミュニケーションの場となっています。

「情報の共有」は、PNSでの重要なキーワードです。

9:00ペアでラウンド(患者の観察・処置)

ペアでラウンド
パートナーシップマインド(相手を信頼する・尊重する・慮る心)を大切にしながら、毎日がOJT

ペアで患者さんのベッドサイドへラウンドに行きます。1人が観察項目のチェックやバイタルサインを測定し、1人がリアルタイムに電子カルテに入力をします。同時に点滴なども協力して実施します。

また当日の入院患者の情報収集をして、手術や治療の準備も行います。ICUや手術のお迎えでペアが離れる時間もありますが、コミュニケーションをしっかりとって情報共有をすることで、効率よく業務を実施することができます。

1人でラウンドに行っていた頃には得られなかった、先輩の経験に裏打ちされた看護のコツを垣間見ることができると同時に、ベッドサイドでのOJTの場となっています。

11:00交替して休憩(45分)

11:00~11:45と12:00~12:45の45分ずつ、交代して休憩をとります。

13:00ペアでラウンド

ペアでラウンド
術後患者の観察やオリエンテーション

午前中と同様にペアでラウンドをして、術後患者の観察や、介助が必要な患者のケアを行います。

その他にも術前や退院前の患者情報を整理し、オリエンテーションなども行います。

14:00カンファレンスとリシャッフル

カンファレンスとリシャッフル
連絡事項とインシデントの共有をした後、残務の確認とリシャッフル

毎週月・木曜は退院支援カンファレンス、月2回は腫瘍カンファレンスを行い、その他必要に応じて多職種カンファレンスを実施しています。ここでは毎日の連絡事項やインシデントの共有に加え、患者カンファレンスで看護計画の見直しを行ったり、勉強会や研修の伝達講習を行ったりしています。

また各ペアの残務(午前中に実施できなかったケアや午後のイベント)を発表します。その後新たにペアを組み直し、定時終業に向けて業務を調整します。

15:00長日勤帯後半(16:45~20:45)に向けて情報収集

  • 長日勤帯後半に向けて情報収集
  • 育児部分休業のスタッフ業務終了
長日勤は日勤と離れ、長日勤帯に向けての準備を開始

ここからは長日勤と日勤が分かれて業務を行います。長日勤同士でペアを組み、日勤ペアの患者さんを長日勤4人に割り振り情報収集をします。

また、日勤や育児部分休業のスタッフはカンファレンスで決められたリシャッフルペアと協力し、定時終業に向けて残務を実施します。

*16:15 育児部分休業のスタッフ 業務終了

16:00休憩(30分)

30分休憩して後半の業務に備えます。

16:30日勤の残務引き継ぎ

長日勤ペアでラウンド

長日勤が残務を引き継ぎ、日勤は終業

日勤から15時以降の患者さんの状況の申し送りと共に残務を引き継ぎ、日勤は終業します。

ここからは長日勤ペアと日勤遅出(11時出勤)が患者さんを担当します。次のラウンドまでの間、残った記録や日勤の残務を実施し、長日勤ペアでの情報共有をします。

どの勤務も必ずペアを決めて共通の情報を持つことにより、困ったときの相談やアドバイスをスムーズに行うことができるため、安心・安全な看護の提供につながっています。

*16:45 日勤スタッフ 業務終了

17:00長日勤ペアでラウンド

長日勤ペアでラウンド

主に日勤帯で担当していなかった患者さんや輸液の必要な患者さん、重症患者さんを中心に長日勤ペアでラウンドをします。

19:00ペアでラウンド

ペアでラウンド

長日勤は最後のラウンドへ、日勤遅出は長日勤の補完を

長日勤は勤務の最終のラウンドへ出掛けます。働く看護師の人数は減っていますが患者さんはまだ活動しているので、長日勤は少なからず業務に追われる時間帯です。

長日勤が患者さんのことに集中できるように、日勤遅出はナースコールの対応や手術・検査のお迎えなど徹底的に補完を実施します。できるだけリアルタイムに記録をして、夜勤への申し送りに備えます。

20:30夜勤へ申し送り

夜勤へ申し送り

夜勤に残務を引き継ぎ、長日勤終業へ

記録できていない情報については夜勤へ申し送りをします。

20:45業務終了

現場の声PNSを導入して

おかあさん看護師の強い味方“PNS”
看護師(育児部分休業)
看護師(育児部分休業)

私は育児休業から復帰して当病棟に配属になりました。出産前に勤務していた病棟への復帰でしたが、業務内容など変更された点も多く、最初は戸惑うことも多くありました。
そのような中でもPNSは「二人三脚型」で働くことができ、慣れない処置やケアもその場で相談することができるため安心です。またペアでお互いに補完をしながら、スムーズに効率よく働くことができるため、超過勤務はほとんどなく定時で帰宅しています。
そして夜勤でも日中と同様にPNSで看護を実践するため、今では育児部分休業を利用しながら夜勤もできています。

復帰前は仕事と育児のバランスに不安を感じていましたが、PNSの働き方で、家族とも協力しながら充実した毎日を送ることができています。

PNSで学びが広がる患者様にとってより良い看護を提供することができる
新人看護師
新人看護師

2022年4月から岡山大学病院で看護師として働いています。
当院ではPNSが導入されているため、先輩にその場で相談しやすく、コミュニケーションをとりやすい環境が整えられています。そのため疑問や不安が多い中でも、安心して働くことができます。また先輩が実践する看護を間近で見て学ぶことができるため、技術や知識だけでなく、教科書に載っていない「現場ならではの工夫や知恵」を知ることができています。
私にとってPNSは、安全の遵守と自分に足りないものを見つけて思考を深める機会を多く得ることに繋がっています。

今後も患者さんにとって最良の看護を提供できる看護師を目指して、日々学んでいこうと思っています。

岡山大学病院

岡山大学病院 看護研究・教育センター

国立大学病院看護部長会議

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